●バハムート[Bahamut]
FFシリーズではお馴染みの幻獣でしょう。
最近のシリーズではその座を奪われがちになっていますが、最強の召喚魔法としてその名を轟かせています。
幻獣神にして竜族の王でもあり、『メガフレア』で全ての敵を薙ぎ払う巨大な竜の姿が印象的です。
では、原典においてはどうかと言いますと…、
回教伝説によれば、そもそも竜ではなく、魚になってます。FFでその存在を知っていた人には少々幻滅されそうですが。
神は大地を作ったが、大地には礎が無かった。
そこで神は大地の下に天使を作った。
しかしこの天使には礎が無かったので、神は天使の足の下に紅玉(ルビー)の岩山を作った。
しかし岩山には礎が無かったので、その下に神は四千の目、耳、鼻孔、口、舌、足を持つ雄牛を作った。
しかしこの牛には礎が無かったので、神はバハムートという名の魚を作り、その魚の下には水を、水の下には闇を置いた。
そしてこの闇の彼方は人知の及ばぬ所である。
回教伝説にはこう記されています。
これは、あらゆる原因はそれに先立つ原因を必要とし、それ故に無限に進んでいく事を避ける為には第一の原因が必要である…、
と言う事を示しているのだそうです。
また、バハムートは元はべヒーモスとして存在しており、それが魚の姿に変えられたのがバハムートだという伝承もあります。
FFにおけるバハムート像は原典と全く違いますが、FFWでバハムートがべヒーモスを従えていたあたりは、
何やら原典との関連を感じさせなくもありません。
●バルトアンデルス[Baldanders]
魔術士オーフェンに『バルトアンデルスの剣』なる物が登場していたので、この名をご存知の方は結構多いのではと思っています。
魔術士オーフェンにおいて『いつでも他の何か』という意味だという記述がありましたが、原典でもそうです。
また、『じきに別物』という訳し方もあるようです。
グリンメルスハウゼンの『阿呆物語』にその存在が記述されており、
とある森の中で主人公は石の像に出会う。
彼にはこれが何処か古代ゲルマンの寺院から来た偶像のように思われる。
彼が像に触れると、像はバルトアンデルスと名乗り、
そしてすぐさま人間、樫の木、雌豚、太いソーセージ、クローバーの畑、糞、一本の花、花を付けた枝、桑の茂み、絹のつづれ織り、
その他たくさんの物や存在に変幻し、それからもう一度人間の姿になる。
彼は書記にも姿を変えて、「我は始めにして終わりなり」というヨハネ黙示録の言葉を書き記す。
バルトアンデルスは更に、自分の紋章が変わりやすい月であるとも語る。
と、なっています。
魔術士オーフェンにおいて、『バルトアンデルスの剣』は『月の紋章の剣』とも称されています。
バルトアンデルスという言葉の意味においては、原典とほとんど同義で扱われているようです。
●バジリスク[Basilisk]
色々なファンタジーモノに出演する有名所の幻獣ですが、
その姿は大抵爬虫類の様相で、石化能力を備える…といったものが定番だと思われます。
では、原典ではと言いますと…興味深いのは、コカトリスと同じ存在とさせている事です。
正確に言えば、嘗てのバジリスクは現在におけるコカトリスの風貌をしており、それが何時からか爬虫類的な姿を与えられ、
現在における分化を招いた…という事になっています。
コカトリスの外見は鶏冠と、黄色の羽毛と、幅広い翼と、蛇の尾を持つ四本足の鶏となっています。
それがアルドロヴァンディの『蛇と竜の博物誌』の図版において、羽毛では無く鱗を与えられ、八本の足を使えるとされたものが
現在で言う所のバジリスクと言う訳です。
バジリスクはその眼差しに毒を秘め、一瞥で生物を死に到らしめたと伝承にあります。
バジリスクは砂漠に棲息したが、正確にはその棲息するところが砂漠になる。
鳥たちはその足元に倒れ、大地に実る果実は黒ずんで朽ちた。
バジリスクが喉の渇きを癒す川の水は何世紀にも渡って毒が消える事は無かった。
そのほんの一瞥が岩を砕き、草木を焼き尽くした。
しかしあらゆる生き物の中で鼬だけはこの怪物の力を受け付けず、その目を攻撃する事が出来た。
雄鶏の鳴き声でバジリスクは慌てて逃げ去るとも信じられている。
バジリスクと石化能力の関連は、バジリスクがゴルゴンの血から生まれたという伝承にありそうです。
ゴルゴンの目には生き物を石に変える力があったと記されています。
このあたりがごっちゃになって、ファンタジーモノにおいてバジリスクの目に毒ではなく石化の力が与えられたのではないでしょうか。
●べヒーモス[Behemoth]
これもまた有名な幻獣です。あらゆるファンタジーモノに登場し、その外見は何とも形容しがたい物ですが、
とかく巨大な生物として描かれる事が比較的多いのではないでしょうか。
紀元前四世紀には、べヒーモスは象ないし河馬を巨大に仕立てたもの、
もしくはこれらの動物を誤って大袈裟に変えたものだったようです。
牛の食らうのと同じ草を食らう。
だが、腰にあるその力、腹の中央にあるその勢い!
尾は西洋杉(シーダー)のように堅く、腿の筋は絡み合い、
骨は青銅の管のようで、軟骨は鋼のようだ。
バハムートにも関連があるのは前項の通りです。
●カーバンクル[Carbuncle]
FFシリーズや、ぷよぷよシリーズに登場する幻獣としてご存知の方が多いでしょう。
また、ヴァルキリープロファイルでは『竜紅玉』という漢字表記でそういう名前の宝石も登場しています。
鉱物学においては、カーバンクルとは紅玉(ルビー)の事を指します。
また、古代人にとってのカーバンクルはざくろ石(ガーネット)だったそうです。
つまり、カーバンクルとは元々ルビーを指す言葉だったのですが…。
十六世紀の南アメリカで、スペインの征服者たちがこの名称をとある神秘的な動物に与えた。
神秘的というのは、それが鳥なのか哺乳類なのか、
羽根を生やしているのか毛皮なのか充分に見定めた者が一人としていなかったからだ。
これが幻獣カーバンクルの起源です。
僧侶詩人マルティン・デル・バルコ・センテネラが『アルゼンチナ』でその容貌について表記していますが、
僅かに『燃える石炭の如く輝く鏡を頭に乗せた小さな動物』と記されているだけです。
宝石としてのカーバンクルにはもう一つ伝承があり、
それは竜の脳から取れるが、しかし生きているその獣の首を切り落とすので無い限り、宝石に固まる事は無い。
それ故に魔法使いは眠っている竜の首を切り落とす。
大胆にも竜の眠る所へ入り込む人間たちは、この獣をまどろませる為に調合した穀類を撒き散らし、
獣が眠りに落ち込んでしまってから首を打ち落とし、宝石を抜き出す。
とあります。この伝承から鑑みれば、『竜紅玉』という漢字表記は原典に即していると言えるでしょう。
●カトブレパス[Catoblepas]
FFXに召喚魔法として登場したり、他の作品にもちびちびと登場しています。少々マイナーかも知れませんが。
FFXにおいては一つ目で、長い首を持った緑色の体といった容貌で、目に石化の力があります。
『プリニウス』の語る所によると、
並みの大きさの動物だが、他の色々な点で手足の動きが緩慢である。
頭が極めて重く、その頭をやっとの事で支えており、いつも地面に屈み込んでいる。
こういう状況で無かったならば、人類の壊滅になる事だろう。
と言うのは、その目を見た者は一人残らずその場で死んでしまうのだ。
また、『聖アントワーヌの誘惑』に容貌に関して詳しい記述がありました。
真っ黒い水牛で、豚の頭を地面すれすれに垂らし、空っぽの腸のように長くて締まりの無い細い首がそれを胴体に繋いでいる。
それは泥の中を転げ回り、顔を覆う剛毛の大きな鬣の下に足が隠れてしまう。
人語を解するような記述があった事も述べておきます。
●ケルベロス[Cerberus]
ファンタジーの定番とも言える、著名な犬型の幻獣です。私的にはデビチルのクールが真っ先に思い浮かびます。
また、ネコの王に随分個性的な容貌のケルベロスが登場した事をご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ケルベロスと言えば、最も有名な特徴は三つの頭でしょうが、ヘシオドスの『神統記』では五十の頭を持つとされています。
それが減少していって、現在では三頭が公認のものとされているそうです。
最古の書『テクスト』によると、
ケルベロスは冥府に入って来る者を尾で迎え(この尾は蛇である)、
逃げ出そうとする者をずたずたに引き裂く。
とあります。また、後の伝記によれば、
新しくやって来た者に噛み付く。これを大人しくさせる為に、死者の柩に蜂蜜の菓子を入れた。
と言う事です。
●キマイラ[Chimera]
数多くのファンタジーモノに登場し、三つの動物の特徴を併せ持つ、
或いは異種の三つの頭を持った恐ろしい幻獣として描かれる事が多いように思います。
この特徴は原典によく即しており、ホメロスの『イリアス』によれば、それは神の血脈を引く者で、
前方は獅子、真中は雄山羊、後ろは大蛇の形をし、口から炎を吐き出すと記されています。
ヘシオドスの『神統記』は三つの頭を備えるとしており、背の中央からは雄山羊の頭が突き出ており、
背の一方の端には蛇の頭、他方の端には獅子の頭があると記されています。
『テクスト』によれば、蛇ではなく竜であると記されてもいます。
獅子と山羊と蛇とでは簡単には一つの動物にはならず、人々は奇想天外で寄せ集めのようなイメージを持つ事もあったようです。
そんな辺りが『合成生物』という意味でもこの名称が用いられている要因ではないでしょうか。
今日、辞書に記されたキマイラという言葉の定義は、無駄な、もしくは愚かな奇想となっています。
●エルフ[Elf]
ファンタジーにあまり興味が無い人でも、その特徴を挙げられそうなくらいに有名な幻獣でしょう。
尖った耳と、類稀なる美貌を持ち、作品によっては優れた弓の技術を持つとされている事も多いでしょう。
しかし、原典によれば…小さくて醜悪だと言う事以外、ほとんど知られていない…という記述もあったりします。
何だかゴブリンと混同しちゃってるような感じがしますが…。
面白い逸話として、エルフは遠くから小さな鉄の矢を射るという習性があり、矢は傷痕を残さずに皮膚を通り抜け、
不意な痛みを与える事がある…とあります。
このエピソードがエルフと弓を結び付けているように思われます。
また、新エッダにはエルフを光のエルフと闇のエルフに区分する、とあります。
これがいわゆる『ダークエルフ』なる存在がファンタジーに登場する要因なのでは…。
ちなみに光のエルフは『リョースアールヴァ』、闇のエルフは『デックアールヴァ』と言うそうです。
●ガルーダ[Garuda]
航空会社の名前にも使われている事から想像が付くように、空、鳥に関係がある幻獣です。
原典によれば怪鳥ではなく鳥人の容貌を持っているようです。
ヒンドゥー教の神殿を治める三大神の第二神ヴィシュヌの乗り物であり、
四本の腕があって、それぞれの手に棒、貝、球、蓮を持っている。
ガルーダは半分禿鷹、半分人間で、前者の翼と嘴と爪を、後者の胴体と足とを持つ。
顔は白く、翼は鮮やかな真紅、胴体は金色である。
ある王の作とされる戯曲、『蛇たちの歓喜』ではガルーダは毎日一匹の蛇を殺しては貪り食うが、
遂に仏教徒の皇子に禁欲の価値を教えられ、悔い改めたガルーダはそれまで自分が食べてきた、
何世代にも渡る蛇たちの骨を生き返らせる…という逸話もあります。
●ノーム[Gnome]
土に関連の深い小人というイメージを抱いている方が多いでしょうし、それは原典に即しています。
彼らは地と丘の精霊であり、髭を生やした小人で、武骨でグロテスクな容貌をしている。
僧服の頭巾の付いた、体にぴったりした褐色の服を着て秘宝の番をしている。
面白いのは、その存在は古来から語り継がれてきたものの、名前が付いたのは十六世紀になってからだという事でしょうか。
スイスの錬金術師パラセルサスが名付け親とされています。
●ゴーレム[Golem]
魔法で偽りの命を与えられた土塊として多くのファンタジーモノに登場し、
それは原典に完全に即したイメージなので、別段語る事が無いのですが…、
エレアザールが伝えているゴーレムを作る秘法というのを発見したので、それを記しておきましょう。
必要な手順としてはおよそ二十三の二つ折り本の円柱を網羅し、『二百二十一の門のアルファベット』の知識を要し、
それをゴーレムの器官一つ一つの上で復唱しなければならない。
『真理』を意味するemetと言う語を額に記す。
この生き物を殺すには、その最初の一文字を消し去る。
metと言う語は『死』の意味である。
●ハルピュイア[Harpy]
ハーピーと呼ぶ事もある、どちらかと言えば醜い印象のある鳥人型の幻獣として広く知られているかと思います。
大体、体付きと顔付きは人間の女性に近いものの、鳥としての様相が濃く、
いかにも化け物のような容貌で描かれる事が多いでしょう。
ヘシオドスの『神統記』には長く緩やかな髪を伸ばした翼ある神と、
『アエネイス』には女の顔、鋭い曲がった爪、不潔な下腹部を持つ禿鷹で、癒す事の出来ぬ空腹のために体が弱っているとあります。
どうやら後者の方が一般的に知れ渡っている像の原典のようです。
更にこう記されています。
彼らは山から舞い降りてきて、宴の準備の出来た食卓に襲い掛かる。
不死身で、悪臭を放ち、目にする物は全て呑み込み、終始耳障りな声で鳴き、何でもお構い無しに糞で汚してしまう。
ハルピュイアは地獄ではフリアイ、地上ではハルピュイア、天国ではディーライと称されているそうです。
運命の女神と混同されているとも記されています。
●クラーケン[Kraken]
数多くのファンタジーモノに出演する、実に有名な海の悪魔ですが、作品によって蛸であったり烏賊であったりとバラバラです。
では、原典ではと言うと、蛸で落ち着いているようです。
元々はアラビア人の海竜、または海蛇の北欧版だそうです。
『ノルウェー博物誌』によれば、クラーケンの背は横幅一マイル半で、その触手でどんな大きな船でも抱き込んでしまい、
その巨大な背は島さながらに海上にはみ出しており、唾液を吐き出して海を黒く変える習性があると記されています。
●ラミア[Lamia]
有名且つ原典とのイメージのズレが少ない幻獣です。
ギリシア人やローマ人によると、ラミアはアフリカに棲んでおり、腰から上は美しい女性の姿で、腰から下は蛇。
話す能力は持たないが、音色の良い口笛を鳴らしては砂漠で旅人を騙して貪り食ったとされています。
遠く遡れば生まれは神聖で、ゼウスの数多くの愛人の一人を祖先に持つそうです。
●セイレーン[Siren]
有名でありながら、その姿は鳥人であるとも魚人であるとも扱われる作品によってバラバラに扱われる幻獣です。
ホメロスが『オデュッセイア』で彼女たちを最初に語ったときは、彼女たちがどんな姿だったかを伝えていません。
オウィディウスによると羽毛の赤みがかった鳥で、幼い少女の顔をしていると、
アポロニウスによると上半身は女、下半身は海鳥であると、
ティルソ・デ・モリーナによれば半分人間、半分魚であるとそれぞれ語っています。
鳥でも魚でも、原典にはどちらの解答もあると言えます。
セイレーンと言えば、歌声で船乗りを誘惑して船を難破させると言うエピソードが有名ですが、
オルペウスはセイレーンよりも甘美な歌声でそれを破り、セイレーンたちは海に身を投じて岩に変えられたと記されています。
英語では半分魚であるセイレーンと、魚の尾を備えるマーメイドとは区別されているようです。
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